リモートワークと本社移転 ‐孤独とつながり‐

1.IT会社にとっての出社とは

つい先日、2021年2月8日に以下のようなニュースがリリースされました。コロナ禍においては、特に珍しい種類の情報ではありませんが、象徴的でしたので掲載します。

SAPジャパンとコンカーは、4月に東京・大手町の三井物産ビルへ本社を移転すると発表した。両社のオフィス総床面積を55%削減する。
現在の本社は、SAPジャパンが東京・半蔵門地区で10フロア、コンカーが同銀座地区で1フロアを利用しているが、新オフィスでは三井物産ビルの11~12階の2フロアに集約する。これにより総床面積は55%減少するが、1フロア当たりの面積は、SAPの場合で2.4倍に拡大させる。
両社は2020年2月から段階的にリモートワーク体制へ移行し、既に社員の9割以上がリモートワークを行っているという。SAPジャパンが2020年8月に社員にアンケート(有効回答955件)した結果、50%が「週1~3回程度の出社」、42%が「フルリモートワーク(出社なし)」を希望し、オフィスの在り方を根本から見直す必要があったとする。


SAPジャパン社員へのアンケート結果

新本社は活発なコミュニケーションを促し、社内外とのコラボレーションの場に適した環境を作るという。また、SAPジャパンのデジタルイノベーション施設「SAP Experience Center」や、三菱地所と共同運営するビジネスイノベーションスペース「Inspired.Lab」も大手町地区に所在するため、本社移転により3施設の連携も強化できるとする。

(ZDNet Japanより)

先に触れたように、こうした本社移転、本社売却の事例は、コロナ禍の直中エクセレント・カンパニーの経営判断として、毎日のようにニュースとして私たちの目に飛び込んできます。

整理をすると、

  1. 経営の側面としては、社員の身の安全を考えた場合に、まず政府・行政・医療機関の声に準拠して推奨されるリモートワークを会社での標準的な働き方として導入することで、コロナ禍での厄災から身を守ることを考えます。
  2. 同時に、都心部で未使用となってしまった本社オフィスの使い道がなくなってしまったため、合理的な移転の方法を考えます。

ここで注目したいのは、SAP社が記事として登場していることですね。SAP社は記事の中で、2020年2月からリモートワークへ移行し、とある通り、コロナ禍の「コ」の字が世に出るが早いか、早々に対応をしています。実は、SAP社に拘わらず、コンサルティング会社やITの上流工程を行う会社などは前世紀からすでにそうした働き方を行っており、お客さま先での作業は無論、そうでないときでも、オフィスへの出勤・出社を必須とはされず、重たい弁当箱のような「モバイル」PCとPHSを武器に、リモートワークを実施していた歴史があります。それは、会社の文化背景を働くものに意識させ、個人の自律性を助長し、コミュニケーションの大切さと「個人」と「チーム」の意識を他の働き方の組織より以上に意識させるものでした。平たく言いますと、向き不向きがあるように思います。

2.私たちの組織の対応と課題 

そうしたニュースが飛び込んでくるピークの最中、今月より当社もオフィスを移転しました。ステージとしては、上記のSAP社の例に同じく、全社リモートワークの推奨を2020年6月より実施しており、現在に至るまで新型コロナの感染者を出すこともなく、ただオフィスを移転することにより、SAP社の場合で55%減少した総床面積が、当社においても相当な減少をもたらすことになりました。
この数カ月間のオフィスの閑散とした状態(リモートワーク推奨のため)をみた社員の皆さん、私、そして、内外関係者の皆様は、スリムになったオフィスに一旦の「一件落着」感を持ったのではないかと思いますが、一件は落ち着いたとしても、私たちはまだ道半ばですし、次にまた、新しい課題はやってくるものです。

道半ば – そうです、現在、私たちの新オフィスの運用は、本社移転前のルールをベースとしておりまして、フルリモートを推奨しており、週に1日、チームごとの曜日を設けて、数時間程度出社の日としています。ここは当社の主体的な規程、というより、新本社オフィス側との契約上の制約です。ですから、今後、サテライトオフィスなどを増強していくなどしていき、チームや会社としてのフェイストゥフェイスの時間を増やしていくことを、現在は課題としています。

テレワークが必須・重要であることに疑問を差しはさむつもりはありません。昭和へ逆行する、とかそういう大げさな議論ではないのですが、全ての人が同じスピードで新しい時代へ適応するかというと難しいと思います。効率性・合理性だけでは済ますことの出来ない課題が明らかに、人の集まりには、時代の新旧に拘わらず内包されています。それは、今回のこのテーマにおいては、「孤独」と「つながり」です。

現時点(2021年2月9日)において、まだ本社移転2週目という状況下で、同じくフルリモートという作業環境であるとはいえ、新しい環境での不安は上記の通り、依然として「孤独」や「つながり」不足として露呈してくるのではないかと思います。私たちの本社移転というアクションは、第一歩としては週1程度の出社という制約がある中で、こうした潜在的な課題とどう向き合っていくかが問われることになるのではないかと考えます。

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